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2026.10.13
バリュエーション
【連載第7回】第6回「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」のポイントと実務への影響
いつも弊法人のブログをご覧いただきありがとうございます。
当ブログでは、現在、国税庁で進められている「取引相場のない株式の評価」に関する見直しの動向について連載でお伝えしています。
今回は、2026年9月16日に開催された「第6回有識者会議」の内容について解説します。
今回の会議では、国税庁が提案する新方式「残余利益方式」や「特定の評価会社」に関する個別論点が具体的に提示され、いよいよ制度設計の細部に踏み込んだ議論が本格化してきました。今後の事業承継実務に直結する重要なポイントをしぼってお伝えします。
I. 新方式「残余利益方式」の個別論点
第6回会議では、インカムアプローチを主軸とした「残余利益方式」の具体的な計算方法について、8つの論点が提示されました。 実務への影響が大きい主なポイントは以下の通りです。
1.予測利益のベースは「法人税申告書の数値を前提」へ
企業の会計処理の違いによる評価額の差をなくすため、すべての企業が一定の統一基準で作成する「法人税法に基づく会計帳簿(法人税申告書)」の数値をベースに株価を算定する方向性が示されました。
2 .残余利益の加算期間は「5年程度」
将来の無限期間の利益を予測することは困難であるため、過去の実績(課税時期前5年の正常利益)に基づいて、「5年程度」の残余利益を現在価値に割り引いて加算する案が有力となっています。 また、ターミナルバリュー(6年目以降の残存価値)については、算定の困難さや安全性を考慮し、加算しない方向で検討されています。
3.多額の含み損資産がある場合の減損
評価会社が保有する資産に、多額の減損(簿価>時価)が生じている場合、簿価純資産をベースとした評価額が過大となるおそれがあるため、一定の要件のもとで減損を反映させることが検討されています(ただし、含み益を考慮しない一方で、含み損(減損)のみを考慮することの妥当性については整理・検討が必要とされています。
4.利益操作への厳格な対応(正常利益の算定)
過去の利益をベースに将来を予測するため、以下のような非経常的な損益や利益操作を排除し、「企業の正常利益」に引き直して評価する方針が打ち出されています。
- オペレーティングリース等: 短期的な損益調整が可能な取引は、契約がなかったものとして損益・資産を修正。
- 過大な役員報酬: 親族役員への報酬のうち、経営の対価を上回る一定割合は「会社の利益」とみなして加算。
- 一時的な役員退職金等: 継続的に発生しない一時的な損失は、損金から控除。
5.グループ法人を活用したスキームの封じ込め
「完全支配関係にある子会社株式」については簿価によらず、適正な価額に修正の上、親会社の評価額に反映させる案が検討されています。
6.従業員持株会を有する場合の持株会株式の評価
一定の要件を満たす場合、固定価格で評価することが検討されています。
7.純資産価額方式の選択適用
現行の評価体系では、納税者の選択により、純資産価額方式により評価できる(実質的に純資産価額を上限とする)取扱いがあり、純資産価額方式を存置すべきかの検討にあたり、純資産価額方式そのものの位置付けについて整理する必要があるとされています。
II. 「特定の評価会社」の対象範囲と評価
残余利益方式によらず、純資産価額方式で評価することが相当とされる「特定の評価会社」についても、対象範囲と適用ルールが整理されました。
1.資産管理会社の判定基準の変更: 現行の「株式等保有特定会社」と「土地保有特定会社」を統合・整理し、「単に資産の保有・管理を主たる目的とする会社」として純資産価額方式を適用する方向です。 判定基準は、事業承継税制における「資産保有型会社」「資産運用型会社」を参考に形式基準を設定し、事務負担軽減のため「簿価」ベースで判定する案が示されています。また、土地・株式ごとの保有割合で判定するのではなく、有価証券・賃貸不動産等の特定資産の合計額の総資産に対する割合に基づき判定する案となっています。
2.その他の特定の評価会社: 「組織再編直後の会社」、「開業後5年未満の会社」、「開業前の会社」、「休業中の会社」、「清算中の会社」については、純資産価額方式(または清算分配見込額)で評価する方針です。
III. 経済産業省・中小企業庁からの強い懸念と要望
第6回会議の開催と同日、経済産業省・中小企業庁から「『取引相場のない株式の評価』見直しに係る意見」が提出されました。
意見書では、資産規模が大きい企業や収益性が高い企業ならびに国内外に子会社を保有する企業の評価額が著しく増大する懸念を指摘しています。
このような急激な株式評価額の引き上げは、現行の評価方式に依拠して計画的に準備してきた事業承継計画の前提を覆し、また企業収益の拡大が承継時の負担増に直結するため、収益拡大に向けた成長投資を抑制し、事業承継に支障を来すおそれがあり、政府の「稼ぐ力」強化の政策に逆行すると強く牽制しています。
国税庁の案に対し、拙速な見直しを避け、どのような事業者にどの程度の負担増となるか、業種や経営状況等に応じた具体的な試算・検証を広範に行い、丁寧に議論する必要があると意見しています。
なお第5回会議の際に意見を提出した日本商工会議所も同日、「議論のあり方」、「国税庁が考える残余利益方式の問題点」、「企業の成長投資の抑制と地域経済社会の持続可能性の棄損」、「租税回避行為等の対策」の観点で問題点を提起しています。
IV. まとめ:朝日ビジネスソリューション(朝日税理士法人)の見解と今後の対策
今回の第6回有識者会議により、国税庁が想定する「租税回避スキーム封じ込め」の具体的な姿が見えてきました。
特に、法人税申告書の数値をベースに、役員報酬やオペレーティングリースなどの影響を排除して「正常利益」を算定するアプローチは、従来の実務を根本から覆すものです。
中小企業庁からの意見書も提出され、制度見直しの着地点はまだ見えませんが、評価額が大幅に上昇するリスクに備える必要があります。
自社株式の現状の評価や、今後の制度改正を見据えた事業承継対策についてお悩みの方は、ぜひ朝日ビジネスソリューション(朝日税理士法人)までお気軽にご相談ください。
▶次回に続く(Coming soon)