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2026.09.25

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【連載第6回】第5回「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」のポイントと実務への影響

いつも弊法人のブログをご覧いただきありがとうございます。

当ブログでは、国税庁で進められている「取引相場のない株式の評価」に関する見直しの動向について連載でお伝えしています。

今回は、2026年8月20日に開催された「第5回有識者会議」の内容について解説します。今回の会議では、ついに国税庁から具体的な「新たな評価方式の案」が提示され、それに対して日本商工会議所から極めて強い懸念が示されるなど、議論が大きく紛糾する重要局面を迎えました。今後の事業承継実務に直結するポイントをしぼってお伝えします。

I. 国税庁が提示した新評価方式「残余利益方式」とは?

第5回会議において、国税庁はこれまでの議論を踏まえた見直しの方向性として、会社の規模別区分を廃止し、広範の企業を共通の評価方式で評価する案を示しました。また、理論的な根拠や実証的な裏付けがないとして「類似業種比準方式」を存置することは困難であるとし、インカムアプローチを主軸とすべきと提起しています。

その具体的な手法として国税庁が提案したのが「残余利益方式(簿価純資産ベース)」です。 この方式の主な特徴は以下の通りです。

  • 「簿価」純資産をベースとする: 継続企業を清算価値で評価すべきではないという観点から、時価への洗替を行わず、帳簿価格(簿価)の純資産を使用します。これにより事務負担が軽減されます。
  • 超過収益(残余利益)を加算・減算する: 簿価純資産に対し、企業が通常期待される利益を上回る金額(数年分の残余利益)の現在価値を株価へ反映させます。赤字や低収益の企業の場合は、簿価純資産以下の評価額となります。

II. 徹底した「租税回避スキーム」の封じ込め

国税庁は、新たな評価方式への移行と併せて、評価額圧縮スキームへの対応策も具体的に提示しました。

(1)会社規模等の操作による評価額圧縮への対応

意図的に会社規模を操作して、評価額を圧縮するスキームに対して、規模に関わらず単一の評価方式とする方向で見直すことが示されました。

(2)正常利益での評価

多額の役員報酬、一時的な役員退職金、オペレーティング・リースの活用などによって利益を一時的に操作するスキームに対し、非経常的な損益を除外・適正額に修正した「企業の正常利益」で評価を行う方向性が示されました。

(3)グループ全体での評価

グループ法人税制を使って親会社の資産等を子会社へ移すスキームに対し、完全支配関係にあるグループ法人はグループ全体として評価を行うことが検討されています。

(4)純資産価額方式・配当還元方式の制限

純資産価額方式は原則的評価方式ではなく、「特定の評価会社の株式の評価方式」として位置付ける方向です。配当還元方式についても、特例的評価方式の趣旨を貫徹するため、適用対象となる株主の範囲を見直すとしています。

III. 日本商工会議所からの強い反発と懸念

この国税庁の「残余利益方式」案やスキーム対策に対し、日本商工会議所は意見書を提出し、極めて強い懸念を表明しました。主な反論のポイントは以下の通りです。

  • 評価額が2倍〜5倍に跳ね上がる可能性: 商工会議所の試算によれば、残余利益方式が導入された場合、評価額が現行方式の2倍から5倍近くに達し、相続税負担が数千万円から数億円規模で増加する事例が確認されています。
  • 企業の成長投資を歪める: 残余利益方式では、毎年の利益が純資産に累積的に加算されるため、事業が継続・成長するほど永続的に相続税評価額が上昇することになります。これは、額に汗して会社を成長させた経営者ほど税負担が重くなるという逆説を招き、政府の成長戦略にも逆行すると強く批判しています。
  • 中小企業への一律適用は不合理: 新方式で定める還元率(期待収益率)を、上場会社のデータを参考にCAPMを用いて算出するとされているが、このように算出された一律の還元率を上場企業と同等に中業企業に用いることは、収益変動リスクや経営者個人への依存度が高い中小企業の実態に合わないと指摘しています。
  • 役員報酬やホールディングス化への過度な制約への反対: 租税回避対策として役員報酬等に制約をかけることは、地域経済を牽引する役員への正当な報酬や真っ当な経営に悪影響を及ぼすと主張しています。また、経営の多角化やM&Aを目的としたホールディングス形態まで阻害すべきではないと牽制しています。

IV. まとめ:朝日ビジネスソリューション(朝日税理士法人)の見解と今後の対策

今回の第5回有識者会議では、「類似業種比準方式の廃止」と「残余利益方式への一本化」という国税庁のドラスティックな具体案が飛び出し、それに対する経済界(日本商工会議所)の猛反発が浮き彫りになりました。

もしこの「残余利益方式」が採用されれば、優良な黒字企業や純資産が蓄積されている企業においては、自社株の評価額が過去に例を見ない水準まで高騰するリスクがあります。また、これまで有効とされてきた類似業種比準方式を前提とした株価引き下げ対策や、グループ法人を活用した対策はことごとく無効化される可能性があります。

見直しの最終決着がどのようになるかは予断を許しませんが、「株価が高騰する前の現行制度下での承継」や「新たな評価体系を見据えた抜本的なスキームの再構築」など、一刻も早い状況把握とシミュレーションが求められます。

自社株式の現状の評価額の試算や事業承継対策についてお悩みの方は、ぜひ朝日ビジネスソリューション(朝日税理士法人)までお気軽にご相談ください。

次回に続く(Coming Soon)

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