TOPICS
新着情報
2026.08.06
バリュエーション
【連載第5回】第4回「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」のポイントと実務への影響
いつも弊法人のブログをご覧いただきありがとうございます。
当ブログでは、現在、国税庁で進められている「取引相場のない株式の評価」に関する見直しの動向について連載でお伝えしています。
今回は、2026年7月3日に開催された「第4回有識者会議」の内容について解説します。 今回の会議では、これまでの各委員からの意見が整理され、当局(国税庁)として意見を求める6つの具体的な事項が提示されました。 いよいよ評価制度の抜本的な見直しの方向性が見え始めてきましたので、重要なポイントをしぼってお伝えします。
I. 評価制度を巡る現状の課題と「予測可能性」の確保
今回の会議資料では、現在の取引相場のない株式の評価を巡る主な論点として、以下の問題が改めて提示されました。
- 類似業種比準方式の計算式が適切に機能していないおそれがあるなど、異なる規模の評価会社間において相対的な不公平が生じていること。
- 配当還元方式などの還元率(10%)が、現在の社会経済状況の変化を反映していない可能性があること。
- 恣意的な会社規模の変化、グループ法人税制、種類株式(無議決権株式)を用いた配当還元方式の濫用などによる評価額圧縮スキームが存在していること。
- 財産評価基本通達6項(著しく不適当と認める場合の例外規定)の適用が、近年、増加傾向にあるが、納税者の予測可能性の確保の観点から、評価通達6項の適用ではなく、評価通達の改正が必要であること。
II. 当局が提示した「6つの検討事項」と評価体系の抜本的見直し
今回の会議で最も注目すべきは、国税庁が今後の方向性として委員に意見を求めた以下の事項です。 従来の評価方式が抜本的に変化する可能性があります。
(1) 評価方法の抜本的な見直しの検討: 評価理論の進捗や社会経済情勢の変化に応じ、企業価値評価の学術的な研究やM&Aにおける評価方法等も参考として、評価方法の抜本的な見直しも視野に検討すること。
(2) 評価方式の一本化: 複数の評価方式が混在する現状に対し、評価方式の一本化について検討すること。
(3) 類似業種比準方式の在り方: 会社法における訴訟やM&Aなどの実務でも用いられなくなってきたことを踏まえ、今後の類似業種比準方式の在り方をどう考えるか。
(4) 純資産価額方式の位置づけ: 純資産価額方式を基本的な評価方式として維持するのではなく、特定の評価会社の株式の評価方式として存置することをどう考えるか。
(5) 配当還元方式の対象整理: 配当還元方式の趣旨が貫徹できるよう、対象株主の範囲や派生する従業員持株会の関係も整理すること。
(6) 資産管理会社の評価: 少なくとも資産管理会社については、純資産価額方式で評価すること。
III. 実務への影響:「評価方式の一本化」と「資産管理会社の純資産評価」
評価方式がインカムアプローチ等に一本化された場合や、類似業種比準方式そのものの在り方が見直された場合、従来の株価対策を含めた事業承継対策などに関する手法が全く通用しなくなる可能性があります。
また、「少なくとも資産管理会社については、純資産価額方式で評価する」という方向性が明確に示されたことは重要です。 これにより、資産管理会社の規模を意図的に操作して類似業種比準方式を適用させ、評価額を圧縮するようなスキームは完全に封じられることになります。
IV. まとめ:朝日ビジネスソリューション(朝日税理士法人)の見解と今後の対策
今回の第4回有識者会議の資料からは、国税庁が単なる微修正ではなく、評価制度の「抜本的な見直し」に本腰を入れていることが強くうかがえます。 類似業種比準方式の限界が指摘され、評価方式の一本化が論点に挙がったことは、事業承継対策の実務において極めて大きな転換点となります。
今後の制度改正の詳細な内容や時期については引き続き議論を待つ必要がありますが、「現行の類似業種比準方式を活用した株価対策」を前提としている中小企業のオーナー経営者の皆様は留意が必要です。
自社株式の現状の評価や、今後の制度改正を見据えた事業承継対策についてお悩みの方は、ぜひ朝日ビジネスソリューション(朝日税理士法人)までお気軽にご相談ください。
次回に続く(Coming Soon)