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2026.05.11
バリュエーション
【事業承継】自社株を「公益財団法人」に寄附。「租税特別措置法40条」と「株式交換」を活用した事業承継プラン
Ⅰ.はじめに
オーナー企業の事業承継において、最大の課題の一つが「自社株の評価額高騰に伴う税負担」です。後継者への譲渡や相続の際、多額の現金が必要となり、事業の存続そのものを揺るがすケースも少なくありません。
今回は、社会貢献を行いつつ、オーナーの税負担を抑えて円滑な事業承継を実現する手法として、「株式交換によるグループ再編」と「租税特別措置法40条(以下、「措置法40条」)を活用した公益財団法人への寄附」を組み合わせたプランをご紹介します。
Ⅱ.今回のモデルケース:複雑な資本関係を持つオーナー企業
本記事では、以下のような資本構成を持つオーナー企業を想定します。
- オーナー家: 甲社の100%株主であり、かつ、事業子会社2社(A社、B社)の40%株主。
- 甲社: 事業子会社2社(A社、B社)の60%株主。
- 事業子会社(A社、B社): 実際に事業を行っている会社。
現状の資本構成では、オーナー家が「甲社株式」と「事業子会社2社(A社、B社)株式」を保有しており、このままでは事業承継の手続が煩雑になるほか、将来的に企業グループとしての一体経営が不安定になる可能性があります。 そこで、以下の2ステップで資本の整理と事業の承継を行います。
【グループ再編の再検討】


〇ステップ1:株式交換による100%子会社化(グループ再編)
まず、オーナー家が保有株式を公益財団法人に寄附を行う前に、複雑な資本関係を整理します。
【手法】
甲社を「完全親会社」、事業子会社2社(A社、B社)を「完全子会社」とする株式交換を行います。
オーナー家は保有する「事業子会社2社(A社、B社)の各株式(40%)」を甲社へ渡し、対価として「甲社」の株式を受け取ります。
【結果】
- 甲社: 事業子会社2社(A社、B社)の株式を100%保有することになり、指揮命令系統が一本化されます。
- オーナー家: 保有株式が「甲社株式」に一本化されます。
これにより、次のステップである「公益財団法人への寄附」の対象が甲社株式のみとなり、
事業承継プロセスがシンプルになります。
〇ステップ2:公益財団法人の設立と措置法40条の活用
資本関係の整理が完了した後、オーナー家が保有する甲社株式のうちX%(最大50%まで)を、新設した「公益財団法人」へ寄附します。
通常、個人が法人へ株式を寄附した場合、時価で譲渡があったものとみなされ、みなし譲渡課税により所得税・住民税が含み益に対して課税されます。しかし、ここで「措置法40条」の承認を受けることで、この税金が非課税となります。
【事業承継プロセスの流れ】
- 一般財団法人の設立: まず、オーナー家が財産を拠出して「一般財団法人」を設立します。
- 公益認定の取得: 次に、公益性の高い事業計画を策定し、内閣総理大臣や都道府県知事から「公益財団法人」の認定を受けます。
- 株式の寄附と措置法40条の申請: 最後に、オーナー家が保有する「ステップ1で集約した甲社株式」の一部を公益財団法人に寄附をした後に、国税庁長官に非課税の承認申請を行います。
〇このプランの3つのメリット
1. 株式にかかる譲渡所得税・住民税が非課税
措置法40条の承認を受けることで、本来支払うべき多額のみなし譲渡課税による所得税・住民税が非課税となります(但し、この非課税措置より寄附金控除の方が有利になる状況もあります)。
2. 経営の安定化とグループ一体経営
公益財団法人が甲社の大株主となることで、株式が散逸することを防ぎます。
また、公益財団は配当金を公益事業の原資とすることで、社会貢献が達成できます。
3. 相続財産からの切り離し
甲社株式を財団へ寄附するため、オーナー家の相続財産から甲社株式が外れます。
これにより、将来オーナー家で発生する多額の相続税の発生に伴う企業経営の存続が危ぶまれる状況を回避できます。
〇.導入にあたっての注意点・ハードル
このプランはメリットが大きい反面、クリアすべき厳格な要件があります。
- 非課税承認の取消:寄附財産(甲社株式)が寄附を受けた公益財団法人の公益目的事業の用に直接供されなくなった場合等においては、国税庁長官は非課税承認を取消すことができます。
- 親族支配の制限: 公益財団法人の役員構成において、オーナー一族(親族)が理事の3分の1を超えてはならない等の制限があります。
- スケジューリングの検討:承認申請は、寄附の日から4ヶ月以内と所得税の確定申告期限のいずれか早い日までに行う必要があります。
- 株式交換の適格要件の検討: ステップ1の株式交換については、税制適格要件を検討して、課税の状況を比較検討する必要があります。
Ⅲ.おわりに
「株式交換」と「措置法40条」を組み合わせた本プランは、グループ経営の強化と円滑な事業承継を同時に実現する強力な手法です。
しかし、これを実現するためには、株価算定、組織再編税制、公益法人制度のいずれにも高度な専門知識が不可欠です。
当法人(朝日ビジネスソリューション株式会社、朝日税理士法人)では、株式交換比率の算定、組織再編税制から公益認定のサポート、国税庁への承認申請手続まで、トータルで支援する体制を整えております。
「自社の株価が高く、事業承継に悩んでいる」「社会貢献型の事業承継に興味がある」といったオーナー経営者様は、ぜひ一度ご相談ください。